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読み聞かせエピソード

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イラスト:ゆーぱぱ

『懐かしの絵本、引っ張り出す長女』

一人で読書を楽しめるようになった10歳の長女が先日、
珍しく「今日はこれを読んで」と絵本を選んできた。
3歳の頃に大好きだった『よるくま』(偕成社)だ。
「これ、ほとんど暗記していたんだよ」と昔話をしながら読んだ。
翌日には、5歳の頃にはまった『ゆびたこ』(ポプラ社)を
「このおかげで指しゃぶり卒業できたよね」と、懐かしく読んだ。
その後も時折、親しんだ絵本を引っ張り出してくるようになった。

なんとなくこの気持ち、わかる気がするのだ。
私も小学生の頃、幼い自分の朗読を録音した
カセットテープを聞いて涙が止まらなくなったことがある。
テープから聞こえてきた、たどたどしい朗読と、
それを「上手だねえ」と笑っている母の声。
父と母に甘えていた幼い自分が、少しうらやましく、
悲しくなってしまったのかもしれない。

長女に懐かしい絵本を読み聞かせていると、
決まって「この時の私はどうだった?」と尋ねてくる。
返ってくる答えはもう知っているはずなのに、何度も何度も。
たぶん彼女なりに、たくさん甘えた記憶と、
それを受け入れてもらっていた空気を確かめているのだと思う。
そしてそれは、ちょっと形を変えた「甘え方」なんだとも思う。

読み聞かせにはきっと、こんな“効用”もあるのだ。
少しずつ大人になっていく彼女を見ながら、思う。
あなたが望む限り、お父さんはいつだって読み聞かせしてあげるぞ。
安心して、大きくなれ。

神奈川県 ペンネーム・トト 44歳

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